葬儀の事前準備について考える

映画『おくりびと』が注目されたり「終活」という新語が誕生したあたりから、葬儀を元気なうちに考えることをタブー視する人が少なくなってきました。最近の葬祭関連のイベントは、遺影を撮影したりひつぎに入る「納棺体験」など、参加型が人気です。会葬礼状の文面を考えたり、参列者に振る舞う料理の内容を考えるケースもあります。こういったイベントに参加せずとも、葬儀の準備は誰でもできます。

その一つが友人、知人リストを整理し、最期に会っておきたい人、葬儀に呼んでほしい人、呼んでほしくない人を明確にしておくことです。最近は家族間であってもお互いの交友関係を知らない人も少なくありません。声を掛けるべき人に知らせなかったために、後で「知らなかった」「教えてほしかった」と家族が責められるケースもよく耳にします。また、「亡くなったことを最近知った」と、生前交流のあった人から次から次へと香典やお悔やみの手紙が届き、それが喪明けまで続くことも珍しくありません。

遺族は葬儀が終わったにも関わらず、こうした人々にお礼やお詫びの言葉を述べたり、礼状を送ったりしないといけません。交友関係を整理しておくことで、子供たちに余計な苦労や迷惑をかけずに済むばかりでなく、葬儀の規模も把握することができます。結果として費用面も合理的に考えられるようになります。ただし、合理性を求めすぎて大切なことを見失っている人も少なくありません。

金銭的負担をかけないようにと「儀式は不要、火葬のみで構わない」「遺骨は散骨で」と一方的に宣言してしまうと、残された家族の弔いの心をシャットアウトしてしまうことになりかねません。人形供養、針供養などといった言葉があるように、人間は役目を終えたモノに対して手を合わせたいという心を本質的に持っています。こうした視点で自分のお葬式はどうあるべきかを家族と一緒に考えてみるのもよいかもしれません。