時代とともに変わりゆく葬儀の形

葬儀市場は今、激しく揺れています。高齢化で膨らむ市場を見越して異業種参入が進み、ネット手配の増加で関連費用もかなり透明化してきたからです。通常は遺族や親戚、近所の人や、生前故人と親交のあった人が通夜や告別式に参列するもので、「一般葬」と言われます。これに対して通夜や告別式を行わず火葬だけを行う「直葬」、告別式は行わず通夜だけで済ます「一日葬」、遺族や友人、知人が参列して通夜や告別式を行う「家族葬」といった簡素なお葬式がここ数年で普及。

少子高齢化による会葬者の減少とも相まって低価格化や簡素化が進んでいます。これまで葬儀専門会社(公益社等)と冠婚葬祭互助会(ベルコ等)が市場を二分してきましたが、JA(農業協同組合)が地方でシェアを伸ばしているうえ、生協や鉄道、流通など異業種が参入しています。ネットでは葬儀手配の専門サイトが勢力を拡大。手配は基本的に費用が明示され、低価格化に拍車をかけています。

直葬をはじめとする小規模葬儀が一定規模まで成長してきたのを感じたのは、私自身祖父が亡くなって初めて「家族葬」なるものを経験した時です。私は地方の、しかも田舎の出身で、お葬式は家から出すのが普通の地域で育ちました。葬儀社の会場を借りるのも勿論一般的でしたが、家族葬はまだその頃珍しく、父がその選択をしたことに驚いたほどです。お葬式の慣習は田舎ほど根強いものがあり、基本的に家族、親戚しか参列できない家族葬を選んだ父は近所のを非難を受けました。

でも実際経験すると、家族葬ほど故人とゆっくり過ごしてお別れができるものはないと感動したのが本音です。大切なのは故人をいかに悼み送るか。小規模ゆえに業者の方の心遣いも行き届いているように感じました。今後ますます業者間の競争は激化するかもしれませんが、それがサービスの向上につながるのならそれもよしと言えるのかもしれません。